スーパーマンの最期

水野重康


「スーパーマン」の物語は大不況のさなか、1930年代初頭に4人の高校生によって考え出された、世界中の誰もが知っている名高い物語であります。
途中、幾つかの変遷を経た後、この歴史的な物語もついに終末の時を向かえるに至り、その最後の戦いの相手として考えだされたのが、怪物「ドームズ・デイ(審判の日)でした。

「ドームズ・デイ」とは何か? そしてどこから来たのか?
一切は語られていませんが、「地底の牢獄」を破りこの世に出現した「地獄の魔神」とも言える、とてつもない「怪物」だったのです。
この「怪物」が、地上のありとあらゆるものをなぎ倒して「メトロポリス」に暴れ込み「アメリカンコミック」のヒーロー達(スーパーズ)が総がかりでこれと対決すると言う展開に至ります。

しかし、「ドームズ・デイ」の力はあまりにも強大無比。
これまで、幾多の敵を打ち倒してきた「スーパーマン」の力を持ってしても、全く歯が立たず、「スーパーズ」は全滅してしまいます。
そして、最後の力を振り絞った「スーパーマン」は廃墟と化した「メトロポリス」で「ドームズ・デイ」との最終決着戦を行います。
その結果、「スーパーマン」は「正義の味方」の衣を捨て去り、「悪の権化」と化して、青い服も赤いケープも打ち捨てて戦い「ドームズ・デイ」と相打ちに成ります。
「途方も無い邪悪」は「正義の味方の力」では抑えきれない、と言うなかなか深い意味のラストであります。
「スーパーマン」は恋人の「ロイス・レーン」や育ての父母に看取られながら息絶えるのでして、この巻を持って長い長い「スーパーマン」の物語は一応幕引きとなります。

・・・と言う予定だったのですが、この後すぐに「スパーマンをもう一度見せろ」と言う要望が起こりまして、「スーパーマン復活」となるわけです。

「スーパーマン」の死後、その魂は4人の青年に分割され、「スーパーマン」が4人誕生することになります。
しかし、この話は評判が悪く、この後、「スーパーマン」が再び命を得る下りがありまして、現在は、以前と同じ様に「メトロポリス」を守る「正義のヒーロー」として話はひきつずいています。

「スーパーマン」の最後の相手として考え出されたのが「悪そのもの」と言う設定はなかなかに上手いところでした。
そして、驚くべき事は、前述の様に「スーパーマン」が「悪の権化」と化してしまい、その力で「悪そのもの」を倒すと言う下りです。
「正義」と「悪」は表裏一体と言うよりも、「同一物」ではないか?
とも思える部分がかなり秀逸です。

尚、「スーパーマンの最期」の日本版はご覧になった方も多くいらっしゃると思いますが、余談的に、この監修は「モンキー・パンチ」であります。

次回は「永井豪」の超大作「凄ノ王」の完結編のはなしです。
魔神「凄ノ王」の退治方は、ものすごくユニークで良いアイデアです。



2003年5月


(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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