ボウリング・フォー・コロンバイン

水野重康


まず、申し上げておきます。この映画は、「禁じ手」なのです。

映画のタイトル「コロンバイン」は2人の在校生が校内に銃を持ち込んで10数人の人間を射殺してしまったと言う、空前未曾有の出来事が起きたその「コロンバイン高校」のことです。
「ボウリング」とは「えぐる」と言う意味とゲームの「ボウリング」を掛けてあります。

冒頭から何とも言えぬ様なボウリング場の映像が出てきたりで、かなりショッキングなのだがこの場所には意味があるのがわかる。
そして、映画はグリグリと言う感じでこの事件の真相に食い込んでいく。
原因のひとつとして、「マンソン」というロック歌手の話がでてくるが、これがまた、えらい格好をしているので事情を知らないと「お前が悪い」といいたくなる様な感じ。ところが、口を開くとえらくまともなことをいうので、これが面白い。「おれは、ロック歌手だし、こんな格好をしてるから自分が原因に仕立てられるのはそれが分かりやすいからだ」
ウン・・まさしくロック歌手ですな。

この辺りから、話は根源的な問題である「銃」に触れてくる。車椅子に乗った被害者をスーパーのKマートへ連れて行って全店から「銃弾」を撤去させるシーンはすごい。・・・というよりも、「アメリカと言う処はスーパーで銃が買えるのか」とわかっていてもビックリしてしまう。

そして、最後に来るとついに「あの人」がでてくる。
「全米ライフル協会・会長・チャールトン・ヘストン」
ここでいろいろなやりとりがあるのでクドクド書かないが、「武装の権利は保障されている」と言うたてまえのヘストンは話が進むにつれて「アメリカは血塗られた歴史の国だ」と言い、最後には「だから、銃が有ると安心だ」「色々な人種がいるからな」とものすごい事をいってしまう。
そりゃあね、ヘストンが共和党の支持者だとは昔から知っていますし、映画の中と現実が違うのは百も承知ですが、それを割り引いても「モーゼ」や「ベン・ハー」「エル・シド」等の偉大なる男を演じてきた、あのヘストンがこういう言葉をそれもスクリーンに向けて(TVなら分かるけど)言うとは、そして、いわせるとはすごいことですね。
「グレゴリー・ペック」に次ぐハリウッドの人格者もこれでは単なるW/A/S/Pの暴力老人ですなあ。

この映画は「劇映画」ではないから「映像理論」もなにも全然有りません。只、有るのは事実の追求だけというメチャクチャな映画です。
この手法は一回だけしか使えません。 だから、「禁じ手」。
同じドキュメンタリーでも「やらせ」の塊の様な「世界残酷物語」がえらく懐かしく思えました。

最後に一つ。この映画は、日本では単館ロードショーで恵比寿ガーデンシネマ1でしか観れない様な事をかいてある本があるが、それは大ウソ。独立系の映画なので、色々な都市で上映されています。私は、浜松で観ました。



2003年2月脱稿

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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