「『ハムナプトラ2』にイムホテップが、また出てきましたよ」
このように質問されたので、
「あたり前ですね、不思議でも何でもないですよ」
「でも、変だな、また出てくるなんて、変だ」
「別に変ではありませんよ」
こう答えて、私は気がつきました。
「そうか、意外とミイラの話は知られてないんだ」
 そういうわけで、今回は、ユニバーサル4番目の怪物「ザ・マミイ」こと「ミイラ」の話であります。
 今から70年前、ユニバーサルは三大怪物(ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男)に次ぐ怪物として「ミイラ」を世に送り出しました。
 これが32年にボリス・カーロフが演じた『ミイラの再生』です。
 テーベの砂漠で一体のミイラと小箱が発見され、小箱には「開く者には死が訪れる」と書いてありました。
 ミイラの正体は、王妃アンクスナムン(アンク・エス・エン・アモン)に邪恋した高僧イムホテップであり、墓あばきの人々を恐怖にたたき込むという物語です。
 ミイラが目を開けるシーンがものすごく、これが大評判を呼びました。
 しかし、カーロフはこのミイラ役が気に入らず、『ミイラの再生』一作で降りてしまいました。

 この後、40年に入りミイラ4部作が作られました。
『ミイラの復活』『ミイラの墓』 『執念のミイラ』 『ミイラの呪い』です。
 カーロフの『ミイラの再生』とは少し、内容が違っておりまして、邪神に魂を売りわたして、ターナの葉を使い王妃アナンカを復活させようとして捕まってしまい、舌を抜かれてミイラにされてしまった高僧カーリスが現代に蘇るという話です。
 ミイラ4部作は、内容的にはどうと言うことはないのですが、大事なことがふたつあります。

 ひとつは、4部作のラストは必ず炎で焼かれるか、沼に没してしまうかのどちらかなのですが(後年、クリストファー・リーが演じた『ミイラの幽霊』は、焼かれて沼に消えて行く)、必ず、次回作には無傷のままで出てきて、「怪物は死んではいなかったのだ」と言うシーンをこじつけてしまいます。
 これを「ユニバーサル的結末」と申します。
 この形は、以後あらゆるメディアで使われ、東宝のゴジラシリーズでも使われております。
 つまり、前作のラストと今回のオープニングがつながっているようでつながっていない。早い話が、「どうでも良い」と言うのが「ユニバーサル的結末」なのです。
 もうひとつは、『執念のミイラ』に見られるのですが、俗に言うところの「ヒロイン殺し」。
 王妃アナンカの転生したヒロインが、ラストで高僧カーリスのミイラにエネルギーを吸い取られてミイラになって死んでしまうと言うものです。
 この部分は昔から、怪奇映画ファンの間で語りぐさになっているシーンでありまして、ヒロインが殺されるシーンの映画がありましたらこの『執念のミイラ』からアイデアを取っていると考えて下さい。

 では、どういう意味なのかと言いますと、ミイラの高僧カーリスが王妃アナンカをミイラにすることにより、自分と同じ世界に引き込まれると言うことなのであります。
 さて、ミイラ4部作のあと、盛んにミイラものが作られたのですが、日本に入ってきたもので有名なものはハマーフィルムの『ミイラの幽霊』『ミイラ怪人の呪い』でしょう。
『ミイラの幽霊』は、カーリスとアナンカの物語ですが、目が「ガーッ」と開くところは『ミイラの再生』のマネです。
 そして、『ミイラ怪人の呪い』。
 この映画は、以前のミイラ物とは全く違った設定をしております。
「死者の書」を逆さ読みされて、土くれになって消滅してしまいます。
 日本の珍品『恐怖のミイラ』もこの形をしています。

 ボリス・カーロフのから始まるミイラの系統はだいたい、このようなところですが、ミイラ4部作のうち、日本で公開されたのは『ミイラの呪い』だけです。
 ところが、昔の映画輸入形態はかなりいい加減なものでして、正規のルートではない形で上映されるものがかなりあったのです。
 私も、ミイラ4部作は、静岡の『ミイラ大会』で観たという次第であります。
 さて、それをふまえて、『ハムナプトラ』の「1」と「2」を観ますと、全体のストーリーは『ミイラの再生』を押さえています。
 イムホテプがまたまた出てきても、別に不思議でも何でもない事がわかりますし、「死者の書」を読むところは『ミイラ怪人の呪い』であり、生体エネルギーを吸い取られてひからびてしまうのは『執念のミイラ』からもらっている事が理解できます。
 ただ、「ラムセス二世」や、「ネフエレテイリイ」を出したのは時代が全く違うので、とんでもないような失敗だと思いますね。
 話は全体に現代調になっていますが、これはまあ良いでしょう。
「2」では、「スコーピオンキング」なるものを出して、ラストは何だかわけのわからない怪物の形にしてしまったのは、ちょいといただけませんね。
 題名からして『ザ・マミイ』を『ハムナプトラ』にしてしまったのですから、かなり変わっているとは思ったのですが、「スコーピオンキング」はねえ……。
 そして、「2」があれば「3」もあると思われますが、これはもちろん『ハムナプトラ・3』を創るものと思われます。
 なぜかと申しますと、「2」の題名は『ザ・マミイ リターンズ』です。
 アメリカ映画に連作物は数々あれど、「リターン」の文字を使ったら、必ずその後があるのです。
 例外的に「リターン」で終わるものもありますが、「リターン」で終わらない、と言うのが映画界の約束事なのです。
「リターン」は、邦画の「続」にあたりまして、「正」「続」「新」と来るのです。

 しかし、創れば創るほど、正統な形からは、どんどんかけ離れて行きまして、次回作はもうめちゃくちゃな話になってしまうでしょうね。


2001年9月脱稿

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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