映画「水戸黄門」で
「化け物退治」をする作品

水野重康


「水戸黄門」は本当に沢山の俳優が演じておりますが、只一人、選ぶならば、その極めつけはこの人「月形龍之介」でしょう。


「水戸黄門」には、「A級」(いわゆるオールスター)と「B級」(低予算)の2種類ありまして、B級は「水戸黄門漫遊記」の題で親しまれていました。
下記をご参照下さい。

1)水戸黄門漫遊記(第一部・54年)
2)続・水戸黄門漫遊記・副将軍初上がり(第二部・54年)
3)水戸黄門漫遊記・地獄・極楽大騒ぎ(第三部・54年)
4)水戸黄門漫遊記・闘犬崎の逆襲(第四部・54年)
5)水戸黄門漫遊記・火牛坂の悪鬼(第五部・55年)
6)水戸黄門漫遊記・幽霊城のせむし男(第六部・55年)
7)水戸黄門漫遊記・怪力類人猿(第七部・56年)
8)水戸黄門漫遊記・怪猫乱舞(第八部・56年)
9)水戸黄門漫遊記・人喰い狒々(第九部・56年)
10)水戸黄門漫遊記・鳴門の妖鬼(第十部56年)

・・以下続く・・

この中で「化け物退治」に当たるのは
「怪力類人猿」「怪猫乱舞」「人喰い狒々」でして
面白い事に、この三作品は全て1956年作です。

これは、わざと「化け物」を出そう・・と考えられた企画でして、場所によりましては、この三作品をわざわざ「三本立て」として上映していた映画館もありました。
「見るも恐ろしい・・」(一応ですが・・)を謳い文句にした映画でして、確かにその成果が上がりこの三本は「まあまあ」の当たりを致しまして「水戸黄門」の基礎作りにおおいに貢献をした・・・と言っても過言ではない様な受けた映画でありました。

それぞれに「元ネタ」がありまして、
「怪力類人猿」は「宇都宮のつり天井」、「怪猫乱舞」は「鍋島藩の化け猫騒動」、「人喰い狒々」は「岩見重太郎の狒々退治」・・・
でして、これを「毎度お馴染みの・・・」とやっているわけです。

一番面白いのは「怪力類人猿」ですね。
「笛で操られるゴリラ」と言う設定は「う〜ん・・どこかでありましたね」(フランケンシュタイン復活)てな感じでして「元ネタ」が判っているだけに大崩しない分、安心して見ていられる事が出来ました。
最後には、「つり天井」に誘い込まれた「黄門様」一行が「あわや!!」と言う場面になりますが、ここで「改心したゴリラ」の大怪力により「九死に一生を得る」と言うシーンがありましてなかなか面白かったです。
この「ゴリラ」は「毛の少ないマンモスコング」といった感じでしたが、「黄門様」達の身代わりとなり、哀れ「つり天井」の下敷きとなってしまいます。
この映画は、後にコミックス化(ただし、東映には無断で出しました)されまして、その題名は「怪力ゴリラ」と言いました。

「怪猫乱舞」は、正しく「正調・化け猫伝」です。
非業の最期を遂げたご主人様の「血」をなめた「年へたる大猫」が「怪猫」と化し「御家」に仇名す悪人達を「黄門様」達と共にやっつける話しです。

そして「人喰い狒々」
これはチョイとグロですよ。
不治の病に冒され「生娘の生き胆」を飲むと(食べるではなくて飲む・・・と言う表現を使っていた)快癒すると言う言葉を信用してしまい、その結果、「人身御供」としての少女を「大狒々」にさらって来させて、その「生き胆」を「ゴクゴク」飲む・・となるのですが、この「身分の高い殿様」が「黄門様」の「親戚筋」と言うところが「ミソ」なのです。
この「パターン」は後の「岩見重太郎」の映画化(結構沢山ありますよ)の際にもよく使われていました。
(里見浩太郎がやった岩見重太郎等はまるっきり、このパターンです)。
これも後に「コミックス化」されました。題名は「大猿退治」です。

先程も述べましたが、この三本は結構受けたのです。
「水戸黄門漫遊記」の中の一本を見た、知っていると言う場合は、大抵、この三本の中のどれか・・・であると言う確立が高いのです。
私も、この三本は特によく覚えています。


2003年12月

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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