テレビ版「砂の器」

水野重康


「砂の器」を見てみました。
この作品も悪くは無いです。但し、「悪い出来ではない・・」と言うだけでありまして、「出来の良い作品」と言うことではありません。

松竹映画「砂の器」を相当意識して作られているのが分ります。
しかし、物語を2004年に設定してしまった部分が後で「裏目」にでてしまうかもしれませんね。

「言われ無き差別」により放浪を続ける親子・・と言う映画の「泣かせどころ」が果たしてこの年代に再現出来るのでしょうか?
今から30年前に「親子で全国を放浪している・・」と言うことは「単なるフーテン」ではないのかなあ?
この「言われ無き差別により放浪」の部分は、過去の二回のTV化(田村正和、佐藤浩市主演)の際にも「苦しんだ」部分ですし、この部分を視聴者に納得させない限り、作品としては成立しても、成功作にはならないのです。

なにせ、映画「砂の器」のときは「加藤嘉」の稀代の名演技が有りましたので「宿命」と言う言葉が光っていたのですが、「原田芳雄」ではどうですかねえ・・?
暴力老人の様な感じになってしまうかもしれません。
「加藤嘉」と言うのはハマリ過ぎる位ハマッテいましたから、これを越えるのは難しいですよ。
ちなみに、「加藤嘉」と言う人は嘉(ただし)が本名で、芸名としては嘉(よし)と読みます。
山田五十鈴の元・旦那さんでしたが、三年間で離婚しました。

夏八木勲が出てましたが、この人と「原田芳雄」をひっくり返した配役にすると面白かったと思います。

主演の「中居正広」には「?」を付けたくなりますが、「TBS」の意向で「中居を使いたい・・」と決められているのですから、それはそれで良い・・のですがこの件は、以前の「明智小五郎対怪人二十面相」の時と同じでして「ミスキャストは最初から分っている、話題性で視聴率がとれればそれでよし」と言う相も変らぬ「TBS」と言う感じです。
よく「ドラマのTBS」と言われますが、その実体は「ドラマの得意なTBS」ではなくて、「只、ドラマをダラダラと作っているだけのTBS」と言う感じです。昔からそうです、何も変わってはいません。

「和賀英良」と言う役は、「眼技」を必要としますので本当は「目の小さい役者」の方が向いているのです。
「中居正広」の「プチ整形のドングリに近い目」で力み返った演技をすると、どうしても不自然に思えてしまうのですが、まあ、TVドラマですから、これ位でも良いのかも知れません。

「砂の器」・音楽編

配役の件は局側の考えもありますので、それで良しといたしまして、先にも書きましたが、今回のTV版は、松竹映画「砂の器」を相当に意識しています。
映画「砂の器」を成功に導いたものは、何と言っても「菅野光亮」による「ピアノと管弦楽のための組曲・宿命」です。
この音楽こそが「砂の器」を支えています。
この曲を越えるのは、はっきり言って容易な事ではない。
過去にも「小六禮次郎」が正面きって挑んで失敗しています。今回はそのツテを踏まない為にも、相当の部分で、敢えて「菅野光亮」の曲を積極的にそして確信犯的に意識しながら取り入れているのがもうアリアリと分ります。

音楽は「千住明」が担当していますが、「千住明」は売れっ子に成り過ぎているので、「「音楽が作品を左右しかねない」様な、そして「音楽家としての真の実力を問われる作品」から、敢えて「逃避」の形を採り、安全策として、既に高い評価を得ている「菅野光亮」の曲を全面的に取り入れた音楽を作りました。
その為、一見は「良い音楽」に聞こえますが、その実は「逃避の音楽」です。なにか「レイテ沖海戦」の「敵前大反転」みたいですね。
良否は別にして、私個人としましては「?」と言う感じです。
「音楽家」としての考え方の問題もありますが、この辺りが「千住明」の限界なのかもしれません。
所謂、「馬脚を現した」と言う奴ですね。

もう一つ、今回の作品がいかに映画「砂の器」を意識しているか・・と言う事実がもう一つあります。
映画「砂の器」は「和賀英良」のコンサートのシーンのその会場は「埼玉会館大ホール」(旧)なのですが、今回は新装されたその同じ会場を使っているのです。
これは多分「ゲンを担いだ」とか「似た感じの場所で・・」とか色々な理由が有るとは思うのですが、「どうせやるのなら・・」と言う感じなのでしょうね。

今回はTV版「砂の器」のことで書き込んでみましたが、映画「砂の器」の公開時には私の言う「日本映画最後の戦い」が有ったのです。
それは「砂の器」と東宝の超巨編「サンダカン八番娼館・望郷」がまっこうから対決した話です。
これはそのうち必ず書かせたいただきます。


2004年1月

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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