「うしおそうじ」の話
幻の豹マン

水野重康


「鷺巣富雄」こと「うしおそうじ」はそもそもが映像畑の人間でした。

「東宝」入社後「円谷英二」を「師」として仕事をしている内に、時代は「太平洋戦争」に突入。
陸軍で「写真工手」(写真班)として働いている内に終戦を迎え「東宝」に戻って来ました。

そして、「新東宝」に配属されることになりますが、ここで「東宝大争議」(「新東宝夜話」を参照して下さい)に巻き込まれ、「退社を余儀なくされた・・」といえば聞こえは良いのですが、その実は「首切り」に遭ってしまいまして「新東宝」を追い出されてしまいました。

ここで「生きる為には食わねばならぬ・・」と言うわけでありまして「牛尾走児」の名前で「漫画家」に転身いたしました。
後に「うしおそうじ」と名乗りましたが、ここで51年よりの9年間「漫画家」生活を送ることになります。
元々画才が有り、画風も可愛らしかったので、忽ちにして売れっ子の人気作家になり、「少年」で「どんぐり天狗」、「まんが王」で「朱房の小天狗」と言うヒット作にも恵まれました。
「どんぐり天狗」はその名の通り「鞍馬天狗」をモチーフにしており、「朱房の小天狗」は「美空ひばり」の「ひばり捕物帳」からヒントを得ています(格好とか設定がまるっきり同じです)。

さて、9年間の「漫画家」生活で、ある程度の「蓄え」も出来ましたので、これらを元手に「ピープロダクション」を創設する事になりました。

思えばこれが「地獄道」の入り口でもあったわけであります。

「ピープロ」と言うと後年は「特撮もの」で知られる様になりますが、最初は「アニメ」の製作会社でした。
その記念すべき第一作は「辻なおき」原作による「ゼロ戦はやと」でした。
余談ではありますが、この時の主人公の「声の吹き替え」を「北条
美智瑠」が担当していました。私はこの「北条美智瑠」と「里見京子」の声は本当に好きでしたね。

以前は「北条美智瑠」が「声の出演」をしている・・・と言うただそれだけの理由で見ていた番組が数多くありました。

「アニメ」の仕事をやりながら「うしおそうじ」はいつも思っていました。

「本当にやりたい仕事はこれではない・・」そして「特撮物」に対する準備を整えていた時、天地がひっくり返る様な話が飛び込んで来ました。
「TBSが円谷プロと手を組んで特撮作品製作に乗り出すらしい・・」
「ウルトラQ」でした。
「やられた・・さすがは「御師匠様」・・」と言ったかどうかは知りませんが、「ガ〜ン」と言う衝撃を感じたのでした。

そして、いじけてばかりではいられませんので、兎に角走り回って、ついに「マグマ大使」の製作に携わる処までやって来ました。
そして、こうなると話は「トントン拍子」に上手く行きだしまして、「快傑ライオン丸」「風雲ライオン丸」と製作して「宇宙猿人ゴリ」へと進んで行きました(吸血鬼ゴケミドロもありますよ)。

しかし、「天国」と「地獄」は背中あわせ、この頃「ぴーぷろ」は「経営悪化」と「労働争議」が重なり台所事情は「青息吐息の火の車」になっていたのです。
この危機に際して「うしおそうじ」は「一発逆転」の秘策を練り上げながら、それはいつしか「ある作品」へと昇華して行きました。
そして、その作品は次第に現実味をおびてきました。

「マグマ大使」も「快傑ライオン丸」もそして「宇宙猿人ゴリ」も全ては「この作品」のための「習作」に過ぎず、「仮面ライダー」も遥かに凌駕すると豪語し、完成・放映されれば、幾多の「等身大ヒーロー」の頂点に君臨し「エポックメーキング」となるであろう、・・と「ピープロ」がが期待した作品。
それが「豹マン」です。

しかししかし、この「豹マン」を持って「行き詰まった状態」を一気に好転させようと目論んでいたその矢先に「ピープロ」を最大の衝撃が襲いました。
「ピープロ」に火災が発生し財産とも言うべきものすべてが灰燼に帰してしまったのです。
原因は「ピープロ」に侵入した子供の火遊びでした。

この結果「ピープロ」と共に「うしおそうじ」の期待を込めた「起死回生」の切り札(ピープロが言うのには・・ですヨ)「豹マン」も哀れ焼失してしまいました。
ところで「豹マン」と書いて、何と読むかお分かりですか?

雑誌(多分、少年マガジンでした)連載時には「豹ひょうマン」なのですが、TV放映時には「豹ジャガーマン」になるはずでした。
これは「版権」と言う約束事が有ったうえに「ピープロ」の焼失と言う予期せぬ出来事が重なったからなのです。
これと似た話に「版権」の関係で「アラーの使者」が「太陽仮面」と言う全くの「オリジナルストーリー」に枝分かれして「少年」に連載されたことが昔有りました。

さて、消滅した「豹マン」は「うしおそうじ」の執念により意外な形で蘇って来ることになるのです。
それが「鉄人タイガーセブン」です。
つまり「鉄人タイガーセブン」は執念により「似ても似つかない形」に換骨奪胎された「豹マン」だったのです。
そしてこの時、「ピープロ」はもはや「まともな作品」は作れなかったのです。
その為「鉄人タイガーセブン」は「物凄く格好が悪くて、虎ではなくて猫だ・・」と言われ続けたのです。
この後「うしおそうじ」は「豹マン」の幻影を引きずりながら、最後の傑作を世に送り出します。
「電人ザボーガー」です。
「電人ザボーガー」も「豹マン」の面影をどこかに宿しています。
「電人ザボーガー」の終了後、「ピープロ」は暗黒の世界に入り現在に至ったのです。  (了)

私の知っている話は「電人ザボーガー」の辺りまでです。
私の知っている話を中心に書かせていただきましたので不備な部分も多々ありますがお許しください。


2004年4月

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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