マグマ大使四方山話

水野重康


先日、『マグマ大使』の主題歌の中で、「・・・SOS カシーン・・・」の声は誰かという質問が出ていましたが、丁度良い折りでございます。
私は『マグマ大使』にはちょっと違う立場で思い入れがあります。
と、申しますのは、たぶん、たぶん(あまり自信のない方のたぶん)でありますが、「日本で一番最初に民生用のVTRでVTR録画したのは、私である(・・・違うかなあ〜?)」と、言うことなのです。
何だか意味が良くわからないかもしれませんね。
神をも恐れぬ大言壮語みたいな話ですからね。
実は、私は『マグマ大使』の放映当時、「Uマチック」を持っていたのです。
『青の6号』に出てくる「Uキャリア」みたいな名前の「Uマチック」と言うのは「ソニー」が開発したVTRの事でして、プロ用として使われながら同時に民生用として使われると言う、まあ、早い話が「プレベータ」とも言える様な物でして、1インチテープ(現在は3/4インチ)と呼ばれるバカでかいテープを使ったVTRの事です。
テープは最長60分録画で、一本の値段が当時でなんと1万円という代物でした。
私はこんな化け物のような機械を持っていたのですが、よく故障する事と、テープがバカ高い事、そして、VTR録画してもすぐに飽きてしまったりで、いつのまにか戦艦大和の様な宝の持ち腐れ状態になってしまいました。
使い勝手の悪さは天下一品でしたが、ただ、その色はとても素晴らしく、現在のS-VHSなどは逆立ちしても遠く及びませんでした。
とにかく、色はメチャメチャに良かったため、日本の放送局でも長い間マスターテープとして、使用されておりました。

さて、それはさておき、「SOS カシーン・・・」の声は誰かと申しますと、実は誰かは知りません。
しかし、「清水マリ」ではない事は確かです
それは、以下に述べる理由からです。

音の波長が違う。
予算の兼ね合いがあるので、わざわざ出費になるような事をするはずがない。
  合唱団を使うのならその中の誰かで間に合わせてしまう。
  この作品は、予算節約のために、「大平透」が「ゴア様」の声優をやりながら、同時に着ぐるみの中に入っていました。
  しかし、これは大ウケだったのです。
今でこそ声優はメジャーになってきましたが、当時は全くマイナーだったので、わざわざ歌のプロの合唱団の中に入れるとは考えられない。
「アース様」を「清水元」が演じているからと言うのは、こじつけ。

は私のオーディオの方から出ています。
私のオーディオ歴は古くJBLハークネスから聞き始め、幾多のスピーカーを使う中で、アルティック・マルチシルテムを使っていたこともありました。
このシステムの中核となっているアルティック804シリーズは古くから世界各地の多くの録音スタジオに置いて、スタジオ・モニターとして使用されておりました。
つまりは、私のスピーカーから出る音は録音現場の音だったのです。
このシステムにボイシングイコライザー等を組み合わせて聞くと、「・・・SOS カシーン・・・」は「清水マリ」とは違うと言わざるを得ないのです。
確かに似ているとは思いますが、私は今まで一度もこの声が「清水マリ」だと思ったことはありません。
もし、「清水マリ」なら、かなりイコライズされた声になっています。

は正にその通りでして、要するに当時の録音現場の考え方からして、「どうせ、子供向けだから、出来るだけ低予算で早く音入れして切り上げる」と考えているのに決まっているのです。
録音現場というのは、いろいろな面で、俗に言うところの「シビア」なのです。

録音現場と言えば、この前その場に立ち会ったのですが、「ビックリ」したのは、「マスターテープ」の前の段階「マザーテープ」作りになんと「ハードディスク」を使っているのですね。
以前は、2トラサンパチと決まっていたのに、これも時代なのでしょうか・・・。

さて、『マグマ大使』ですが、映画人的に見てかなり適役揃いですね。
「アース様」の「清水元」(後述)、「マモル」の「江木俊夫」、「ガム」の「二宮秀樹」、そして、「マモルの父・村上記者」に「岡田真澄」と、完全に映画的な配役です。
「岡田真澄」は『ゴジラ』の「宝田明」を念頭に設定していますね。
これは本当に適役です。
適役と言えば、「モル」の「三瀬滋子(応蘭芳)」ですが、これはもう笑っちゃうぐらいの配役です。
「失神女優」の名を貰っていた彼女が「モル」とはねぇ・・・。

では、「清水元」について書いておきましょう。
「清水元」は本名を「清水元義」と申します。
芸術小劇場の出身で、後の映画会社を股に掛けて名バイブレイヤーとして活躍しました。
特に、大映、東宝にはたくさん出ています。
黒澤作品にもよく出ていました。
テレビでは『ダイヤル110番』とか『事件記者』の常連でした。
顔が福々しくて、性格が温厚なところから、「元さんニコニコエビス顔」とか「仏の元さん」と言われていました。
このイメージを元にしての配役の妙とも言える適役が「アース様」でした。
(手塚さんの原作よりず〜〜っと良い)
その温厚な「清水元」も、今から30年前に胃ガンのためにこの世を去りました。

その「清水元」の子供さんは男女お二人です。
長男さんはNHKのディレクターをやっていましたが退職なさいました。
そして、長女さんの方は、みなさんご存知の「清水マリ」その人であります。
(ただし、現在の本名は清水姓ではありません)

さて、何で私がこのようなことを知っているかと申しますと、私の師匠が「田山力哉」だった関係で、映画界の裏話をいろいろ教えて貰っていたのです。
というわけで、私は、古いことを知っている事が取り柄のような位置におりますので、知っている範囲でのことでしたならいろいろご返答できるかと思いますので、何かございましたなら「懐かし掲示板」にてお知らせ下さい。

(2002年7月脱稿)

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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