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水野重康


今回の「キング・コング」は前述した様に、相当なまでに「1933年版」へのこだわりが見て取れる。
「1933年版」に近づけようとしているのか?
それとも、「1933年版」を超えようとしているのか?・・
これは多分、両方であろう。


まず、この「新作」を見て(映画館で)誰もが感じるのは、その上映時間の長さ。
3時間強、と言う上映時間は長い。
「この手」の映画にしては、かなりの長尺と言えよう。
「髑髏島」に着くまでが、また長い。
「時代背景をしっかりと描いた・・」と言う処であるが、その割りには「無駄なシーン」も多い。
「デナム」や「アン」の「食い詰め者」状態を、よく描き込んであるのはわかる。
しかし、この「延々と描いた」事が、実は、事志とは違った方向へ作品を引っ張って行く事になってしまうのです。
ともあれ、「コング登場」までの説明を長々と描く事、それ自体は間違いではないのですが、「正しい」かと言うとこれはまた別の話。
「山師」の様な一発屋の「デナム」が「アン」と出会うシーンは「1933年版」でもお馴染みだし、「リンゴを盗む」のは「ニヤニヤ」する様なシーンであるが、「ストリップ小屋」の話等は「カット」しても全く困らない。

「メリアン・C・クーパー」を「カール・デナム」にダブらせ、「デナム」を「ピーター・ジャクセン自身」に、そして、「ジャック・ブラック」へと次々と繋いで行く手法は見るからに「しつこい」と感じる。
どうも「ピーター・ジャクセン」は「偏執癖」があるらしい。

「ジャック・ブラック」が面白い事を言っている。
「ピーター・ジャクセン」は「オーソン・ウエルズ」から「天才の部分」を引いたヤツだ・・。

これは当たっていますね。「オーソン・ウエルズ」が「凡人」になって「しつこさ」が加わったのですな・・。

この「しつこさ」がある種の「グロテスク」とダブっているのです。
考えてみますと、前作の「ロード・オブ・ザ・リング」も相当に「しつこくてグロい映画」でしたからね。
これを端的に表しているのが、谷底で「前世紀の昆虫」と戦うシーンです。これを、当の「ピーター・ジャクセン」は「幻のシーンの再現」とか何とか言って一人で悦に入っていたのでしょうな。
でもね、チョイと待って下さいよ。「前世紀の昆虫」のシーンは、まあ納得したとしましても、どうにも納得出来ないのは、「髑髏島の原住民」のシーンです。
「トレ・コング!!」とか何とか叫んでいた「老婆」は一体全体何ですかね。
かてて加えて、全員が「白眼」だし・・、これは「沈黙の世界」に登場する「白眼の老漁師」の「パクリ」だな。
「原住民aboriginal」である以上、「ニュージーランド」の上方の大海域のどこか・・と言う設定でありますから、この「薄気味悪さ」は解せません。
第一、「ピーター・ジャクセン」の「お膝元」じゃあ〜りませんか。
自分の縄張りですよ。
これは「1933年版」の様な原住民にすべきでした。
その証拠に、「コング」が劇場で「さらし者」にされるシーンは「マックス・スタイナー」の「aboriginal sacrifice dance」に合わせて、「1933年版」の格好で踊りが披露されています。
これは絶対に「1933年版」の「原住民」のほうが正しいです。


ついでに言うなれば、「新作」に出て来る「壁wall」は何故にあのような「チヤチ」な代物なのでありましょうや。
「コング」が突進して来たら一発で破壊されてしまいました。
「1933年版」のように、馬鹿でかい「壁wall」を「コング」がその「大怪力」を持って打ち破る方が面白いのです。
これは「見せ場」の一つでして、その為の「伏線」としては「白眼の原住民」では「ダメ」なのです。
それもこれも「島の周りは岩だらけ」と言う「恐怖の海域」を強調しすぎたためです。
荒れ狂う海、奇岩巨岩に囲まれた「船の墓場」の様な場所に在る、「霧に包まれた神秘の島」は「ロストワールド」の「原始の魔境」でそこにわずかばかりに住む島民は「白眼の原住民」・・これは「やり過ぎ」です。
この部分は「1933年版」そのままに作った方が良かったですね。
「ジョン・ギラーミン版」では、島を覆う「霧」の説明として、「巨大な動物の呼吸による霧である・・」等と言う「オイオイ!!」と言いたくなる様な「トンでもない出鱈目(でたらめ)な屁理屈」をこねていました。
しかし、ある意味では、これ位の「馬鹿げた設定」であっても良いのです。
「クソリアリズムはリアリズムではない」の名言はここにも生きています。


「キング・コング4」に続く

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2006年10月脱稿

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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