「評論・「NOVA」1

水野重康


 

「NOVA」のVTRは一気に見てしまいました。

まず思いました事は、「この作品は面白い」と言うことです。
「アマチュア映画」と「プロの作った商業映画」の違いは一重にこの「面白いか否か」に掛かっていると言っても決して的外れではありません。

「面白くなければ映画じゃない・・」の言葉どうり、「銭っ子」を払って「貴重な時間を割いて」観にいく映画なのですから、当然それに見合った「満足感」を得られなければ困ります(但し、個人により満足感と言うものはかなり異なります)。
そして、観客に「満足感」を得てもらう為に「プロ」は色々と腐心し、ある程度、観客に媚びる部分を作っていく。
しかし、面白いものでこの「媚びる」と言う部分が、妥協の産物である「媚びる」と言う部分が往々にして「名シーン」と言うものになる確率が高いのです。

しかし、「アマチュア映画」は違う。
極端な話、「自己世界の追求」に血道をあげ「自分だけの満足感」に浸る事が出来さえすればそれで良いのあるから、観客を意識しなくても良いし、観客受けする様な「媚びる」シーンを作る必要も全く無い。
もっとものすごく極端な言い方をすると「たとえ、観客数0」でも自分が納得の行く満足感さえ得られれば、そこはもう天上界もかくや・・と思える陶酔感に浸ってしまえるのである。
映画に於ける「プロ」と「アマチュア」の決定的な差はここにあり、「技術」や「制作費」等はその補足的なものにすぎない。
従いまして、「面白いアマチュア映画」を作ると言うことは簡単なようで本当はたいそう難しい事なのです。
それは、自らの世界をある程度破壊して観客と言うものの存在を意識しないと、観客の言う「面白い」と言う表現は決して与えてもらえないからなのです。
当日、「NOVA」を見て下さった方々の感想をインターネット上で拝見させていただくと、おしなべて「面白い」とか「楽しい映画だ」とか「感動した」と好意的にとらえて下さったものが多く見られました。
私も昔はよく「アマチュア映画」に付き合わされて、色々な作品を見てきましたが、所謂、「ゲージツ的にスゴイ」作品は多く有りましたが、「面白い作品」と言うのはそうそう御目に掛かれないのが普通です。
それ故に「NOVA」はスゴイ。
第一、一気に見られる「アマチュア映画」はそうそうめったにあるものではない(大抵、独りよがりでつまらないのが多い)。
「アマチュア映画」として見たら、これはもう「アマチュア映画の領域」を遥かに越えて、遠く銀河系の彼方までブッとんで行ってしまっている。
しかし、「プロを越えたか?」と聞かれては、そこまで言ってはいけないと思う。
いかんせん、「制作費」とかその他諸々の部分で、とても「プロ」には勝てないし「プロ」の作品ではないと思う。
しかし、これは限りなく「プロの領域」にまで近付き、或いは「プロの実験作」にまで食い込み肉薄した作品であると言える。

さてさて、「NOVA」が「面白い」と再三書かせていただいたが、では「何が面白い」のでしょうか?
それは、「序破急」が上手くできているからなのです。
「序破急」は元来「雅楽」の世界の言葉でありますが、転じて物語の作り方の基本の一つに数えられています。
「NOVA」は最初の方で、演出にスピードがありましたので「これは少しマズイな・・もう少しユックリが良いのに・・」と思っていましたら、中間部で持ち直して、後半部で見事に盛り返しました。
これを簡単に言いますと、「ラスト」近くでスピードのある演出をすると、映画と言うものは締まりのあるかんじになり、帳尻が合ってしまうのです。
このラスト近くなって「水谷しゅん」さんのVFXが入りまして、画面上にかなりのスピード感が出た為に、「序破急」が完成して物語にメリハリが付いて「面白い」と感じたのです。
「偶然の産物」かも知れませんが、これが見事に「ピタッ」と嵌りました。
「ラストのほうでスピードを出す・・」と言う方法は、全てをうまく収めてくれる方法ですが、同時に「伏線の整理」が出来なくなる可能性が有るので、単純なストーリー程効果があります。
「NOVA」では主人公がある日突然に「何がなんだか分からない状態」下に置かれると言う、言ってみれば比較的簡単なストーリーだった事もさいわいして後半に入る前に伏線の整理をしておいたのが良かったですね。
(でも・・波川女史の正体は本当のところ一体何なのですかネ・・)

(評論・「NOVA」2へ続く・・)


2003年10月

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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