メリーラ

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第5章  仕返し
 たとえどんなにルーフェが力持ちでも、どんなにメリーラが説得上手でも、バーバラ相手ではお話にならなかった。ついに二人は途方にくれて、洞窟の外へ出た。
「ねえ、あきらめましょう。」ルーフェがため息をついた。
「言葉が通じないんですもの。常識がないのよ」
  メリーラは、あきらめきれなかった。
「だめよ、ここは大切な、二人だけの秘密の洞窟よ。きっとあるわ‥‥何かいい方法が。まあとにかく、小川へ行って裸足になりましょうよ。興奮したせいで、暑いわ。」

  二人は木陰のひんやりした小川に足を沈め、少し清々した気持ちになった。
「一度、家に帰りましょう。のどが渇いてきたわ。メリー、今度はうちへいらっしゃいよ。おばあさまのタルトみたいなものはないけど、おいしいライム・ジュースがあるわ。」
  ルーフェの家に向かいながらも、二人はバーバラへの仕返しのことを考えていた。庭のベンチに腰掛け、ライム・ジュースを飲みながらも、いろいろな不安が頭をよぎった。洞窟の中の敷物やクッションを汚されないか‥ロウソクが減りはしないか‥。頭上の小枝では小鳥が明るくさえずり、満開のライラックは新鮮な香りをまき散らしている。流れ行く雲は、散歩のときのジグソー・パズルのような形が薄らいで、煙のように漂い始めていた。
  庭に放たれているひよこ達が、ルーフェの足元に集まってきた。その時、ずっとうつむいていたメリーラは不意に顔を上げ、
「いいことを思いついたわ!」
と叫んで快活に立ち上がった。目は輝き、頬は紅潮していた。
「バーバラはまだ洞窟にいるかしら。せっかく涼しくなったところを悪いんだけど、走りましょう。いいえ、やっぱり歩いて行きましょう。十分間に合うと思うわ。それに、あたし達が戻って来たと、感づかせてはいけないわ。」
「それはいいけど、何をするの?」
  ルーフェは胸がどきどきした。メリーラの思いつくことは、たいてい愉快で楽しいから。
「歩きながら話すわ。ただし、洞窟が近づいてきたら小声でね。あのね‥‥」
  小川に沿って洞窟に向かう頃には、ルーフェはすべてを理解し、つつがなく今回の作戦を成功させる手順を思案していた。 まずメリーラが洞窟の横の岩陰から忍び足で入り口へ近づき、そっと中の様子をうかがった。運のいいことに、バーバラもケシーも、クッションに頭をのせて眠っていた。小声で合図をする。
「来て、ルー。二人とも夢の中よ。実行するなら、今のうち。それより、見てよあれ!土足で私たちの敷物を踏んでるわ!私たちの、神聖な場所を‥‥。特にバーバラの周りが、ひどく汚れてるわ。」
「あれはきっと、わざと汚されたのよ。あの子、この洞窟があんたと私のだって、分かってるはずだもの。口ではとぼけてるけどね!」
「その通りだと思うわ。さあ、ルー、二人が目を覚まさないうちに‥‥」
  二人は近くの材木置場から、なるべく厚くて大きな板を何枚も運んできて、洞窟の近くに重ねておいた。さらに協力して、太い四角柱を3本持ってきた。ここからが本番だ。厚い大きな板は、洞窟の狭い入り口をふさぐようにして無理矢理押し込み、余った板は立てかけて置いた。中の二人が目を覚ました様子はなかった。次に太い四角柱を縦に2本、カバの口につっかい棒をするみたいに入れ込み、残る1本は横にして、これも力ずくで何とかはめた。この作業の間は没頭していたが、準備が完了すると、不意にかわいそうになってきた。こんな、丘の裏側へは滅多に誰も来ないし、こうして二人を閉じ込めたことは、自分たちしか知らない。もし板が外れなくて、バーバラたちがけっても体当たりしても出られなくなったら、どうしよう。不安を口にすると、ルーフェはこう言った。
「確かに、そのへんのことはちょっと心配だけど、最後にはどうにかなるわよ。さっきの悔しさを忘れたの?メリー、私たちの大事な秘密の場所が汚されたのよ。罰を受けるのは当然だわ。ここから追い出すのは、自分の家に勝手に上がりこんできた強盗を追い出すのと少しも変わらないわ。許されないことをしたのよ。」
ライムジュース
洞窟
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