第三章:薬の副作用及び原因不明の倦怠

2007年11月1〜4日



みぬはグリピザイド(経口血糖降下剤)服用後、食事を済ませた後、いつも通りに元気そうに見えた。
「薬の副作用も出ていないみたいだし、大丈夫だろう」
私は何も気にせず、12時ごろ床に就いた。

しかし、いきなりベッドの横で「ゲブッ」と猫がえずく音がしたかと思うと、ひどい異臭で目が覚めた。時計を見ると夜中の2時である。見ると、夜の8時に食べたはずの食事が殆ど未消化のまま吐き出されていて、私が手で引き裂いて入れた茹で鶏がそのまま確認できた。つまり、未消化の食べ物が消化管内に6時間も留まっていたことになる。それにしても、ものすごい臭い!今まで一気に食べ過ぎて未消化の食べ物を吐き出したことはあったが、こんな異臭のする吐物は初めてだった。片付けている私のほうまで気分が悪くなりそうだった。

翌朝、みぬは水だけを飲んでいた。私はいつも通り出社したが、不安だったので昼休みに様子を見に帰宅した。みぬは昼になって段々食欲が出てきたようで、徐々に食事を取り始めた。私はキャットホスピタルに電話をかけ、みぬがグリピザイドを飲んだ後嘔吐したことを受付嬢に伝えた。生憎M先生は診察で忙しかったので、この段階で直接話すことは出来なかった。
夕方、M先生から折り返し電話があったので、グリピザイドはみぬの体に合わないようなので与えたくないことを説明した。先生曰く、グリピザイドを飲むと15%ほどの猫は嘔吐等の副作用を示すが、1週間経つと慣れるとのこと。しかし、あの異臭のする吐物を1週間も夜中に吐かれたのでは、みぬが可哀相なだけではなく、私もたまらないので、グリピザイドはもう絶対飲ませたくないことを主張した。

夕方にはみぬの食欲も完全に戻り、7時には与えられた食事を完食した。しかしその後、みぬはベッドルームに入り、ベッドの下に篭ってしまった。
「病院に連れて行かれた上に、薬の副作用まで出て、疲れたのかな?」と思い、そのまましばらくそっとしておくことにした。私がリビングでソファに腰を下ろすと、フローラが膝に飛び乗ってきた。普段は自立しているフローラも、みぬがいなくなると途端に甘えん坊になるのである。

みぬがあまりにも静かなので、不安になったが、みぬも疲れただろうからと思い、私は気にしないことにしてシャワーを浴びて床に就いた。普段なら私がベッドに入ると、みぬが私のお腹の上に飛び乗ってくるはずなのに、みぬは静かにベッドの下に篭ったままだった。電気を点け、ベッドの下を覗きこむと、みぬは目を開けたままボーっとして蹲っていた。体に触れても、鈍く反応するのみだった。
私は不安に襲われ、パソコンを立ち上げ、緊急病院の連絡先を調べた。電話をかけると、受付の女性が「絶対連れてくるべきです」と言うので、もう既に夜の11時を過ぎていたが、みぬを緊急病院に連れて行くことにした。捕まえようとすると、みぬはゆったりとベッドの下を逃げ回ったが、なんせ動きが鈍っていたため、簡単に捕まった。キャリーケースに入れようとすると、弱弱しい声で「にゃ〜」と鳴いた。私は化粧もせず、ただ服だけ着替えて病院に向かった。

緊急病院に着き、受付の女性にみぬを引渡し、私はしばらく待合室で待った。10分ほどして、診察室に呼ばれ、そこで当直の先生と会った。最初、先生はちょっと恐そうに見えた。毎度のことながら、先生がどれだけ猫が好きで、どれだけ猫の身になって診察してくれそうか気になるところである。私が当直の先生に、数週間前からみぬの飲水量が増えたこと、ハロウィーンの日にキャットホスピタルにみぬを連れて行き、翌日糖尿病の診断が出たこと、そして経口血糖降下剤を飲ませたら嘔吐し、それ以来薬を与えていないことを説明すると、先生は私の説明を手早くノートに書き留めた。先生は、見た目は少し強面だが、その分とても丁寧で真面目そうな感じがした。
しばらく診察室で待たされた後、みぬを診察し終えた先生が戻ってきた。結局、先生としては経口血糖降下剤による低血糖を最も恐れたようだったが、血糖値は相変わらず高いままで、他何の異常も見つからず、何故みぬがこんなにボーっとしているのかはわからないとのことだった。家に連れて帰って何か起きたら…と思うと不安だったので、臨床症状の観察のためみぬを一晩緊急病院に入院させ、私は帰宅した。

翌朝7時、緊急病院に電話すると、みぬは前の晩よりは元気になったとのことだったので、迎えに行き、そのまま緊急病院での診察結果のコピーを持ってキャットホスピタルに向かった。土曜日だったが、キャットホスピタルは昼まで開いていた。私は改めて院長先生に、グリピザイドがみぬの体に合わなかったことを説明した。先生曰く
「なら、どうしましょう?経口剤がだめなら、インスリンしかないね。用量決定には数日かかるから、月曜日から始めた方がいい。週末は何もしないで来週まで待ちましょう。」
とのこと。月曜日の早朝にみぬを連れて来るよう指示を受け、脱水気味だったみぬは輸液を受けて帰宅した。


(一晩入院した後、帰宅したみぬ。右足の付け根が輸液のため膨れている。)

週末、みぬは特に問題なく過ごした。特に翌日の日曜日は、水もやたら飲まず、全く問題なさそうに見えた。できればこのまま家でゆっくりさせてあげたいと思った。

日曜日は、みぬとフローラの一週間分のご飯を手作りするのが私の日課だった。いつもならDr. ピトケアンのレシピに従ってオートミールを使うのだが、今のみぬに必要なのはローカーボ食。今回はオートミールを使わず、そのかわりいつも使う七面鳥のひき肉を多めに買い、アルファルファなど体によさそうな野菜を少量混ぜてあげた。猫は食べ物の好き嫌いが激しいので、新しいレシピでちゃんと食べてくれるかという不安はあったが、なんせ糖尿病でいつも空腹のみぬ。新しいレシピでも豪快な食べっぷりは健在だった。



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