第八四章:記念日と長期患者への朗報

2010年4月中旬






四月十六日、今年もみぬは無事記念日を迎えることができた。
みぬの記念日とは、以前第二五章及び第五七章に書いたとおり、みぬが私と一緒に暮らすことになった日のことで、今年の四月十六日で七年目の記念日になる。
みぬの実年齢はいつまでも不明のままだが、七年前の段階で、獣医による推定年齢が一歳半から三歳の間とのことだったので、恐らく今は九歳か十歳といったところだろう。

記念日のプレゼントとして、今回はフローラの誕生日(第八一章参照)にクッションを作ったときの残り布で、ベッドを作ってあげた。




ところで、最近、糖尿病患者にとっては嬉しい文献がネイチャー誌に発表された。スイスのジュネーブ大学のHerrera博士らによる研究結果で、膵臓のβ細胞の大部分が壊れてしまった後、α細胞がβ細胞に変換される可能性があることがマウスを使った実験で示唆されたというのだ。1)

専門的な話になるが、この実験では、まずマウスをβ細胞を遺伝子操作して壊れやすくした後、毒薬に晒し、蛍光蛋白によって標識することで、α細胞の運命を追跡したそうだ。その結果、α細胞が寿命を迎えた後、蛍光蛋白標識されたβ細胞ができていることが確認されたらしい。
そして、このα細胞からβ細胞への生まれ変わりは、β細胞がまだ多く残っている状態では起こらず、逆に殆ど失われてしまった後に起こるというのだ。
生憎Herrera博士らによる文献の全文を読むためにはこの文献を購入しなければならないため、私も今のところはニュースサイトでこの文献を紹介した記事しか読んでいない。

もちろんこれはあくまでβ細胞を人工的に破壊させたマウスによって証明された結果なので、実際に糖尿病を患っている他の動物にどうやって応用できるのかは現段階ではまだわからない。
しかし、糖尿病を患った猫が、五年以上にわたる根気強い治療を続けた結果、インスリン離脱できたという例も実際少なくないので、このような猫でも同じことが起きているのかもしれない。

一方、参考資料の「β細胞損傷のメカニズム」でも紹介している通り、糖尿病の初期段階ではβ細胞のダメージが可逆的であることも実験で証明されている。2)
ということは、早期発見で治療を開始すれば、一旦インスリンを放出できなくなってしまったβ細胞が回復する可能性があるが、もし発見が遅れてβ細胞の回復が望めなくなったとしても、今度はα細胞がβ細胞として生まれ変わる可能性もある、つまり、どの段階で糖尿病を発見したとしても、インスリン離脱の可能性は有り得るということになる。


さて、前章に書いたとおり、最近新たにPZI VETの後継品であるProZincを購入したわけだが、ついに十八日の夜、今まで使っていたPZI VETを使い切り、ProZincを使い始めることになった(ProZincの詳細については参考資料参照)。
まだ猫糖尿病フォーラムでも使用例が少ないが、実際使った人の話によると、後継品といえどもPZI VETとは若干違った作用をするようなので、みぬにこのインスリンが合うかどうかは使ってみてのお楽しみだが、もしどうしてもProZincが合わなければ、またBCP社のPZI(100%牛由来)を使うというオプションもあるので、気楽に考えている。


ところで、話は変わるが、「ねこグッズ手作り帖」に引き続き、今度は母が「猫毛フェルトの本」という本を日本から送ってくれた。ブラッシングして得られた猫の抜け毛を、水洗いして圧縮、若しくはフェルティングニードルを使ってフェルト化して作るクラフトの本だが、これからの換毛期、またもう一つ楽しみができそうだ。


(今まで集めていたみぬとフローラの毛を使って作ったポートレイト)

(続く)


4月12日から18日まで一週間の血糖値曲線。緑色が正常範囲で、黄色が高血糖でも症状が出ないとされる範囲。青い四角はインスリンを注射したことを示す。今週は血糖値の下がりが悪かった。インスリンが残りわずかになり、質が劣化した可能性もあり、若干増量した。18日、PZI VETを使い切ったため、夜からProZincを開始。




インスリン用量スライディングスケール
4月12日〜16日
血糖値(mg/dL) 投与量(IU)
135-150-------1.00 弱
151-170-------1.00
171-200-------1.20
201-250-------1.40
251-350-------1.60
351-500-------1.80

4月17日〜
血糖値(mg/dL) 投与量(IU)
135-150-------1.00 強
151-170-------1.20
171-200-------1.40
201-250-------1.60
251-350-------1.80
351-500-------2.00


1) F. Thorel, et al.; Conversion of adult pancreatic alpha-cells to beta-cells after extreme beta-cell loss; Nature. 2010 Apr 4.
2) C. E. Gleason, et al.; Determinants of Glucose Toxicity and Its Reversibility in the Pancreatic Islet Beta-cell Line, HIT-T15; Am J Physiol Endcrinol Metab 279: E997-E1002, 2000







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