本書の強みは3つある。1つ目は、セキュリティを考えるうえでの脅威が明確に図示されていること。特に「第1章インターネット・セキュリティの考え方」では、ネットワーク上のどこにどのような脅威の可能性があるか、わかりやすく図示されている。基本的なセキュリティの概念は、まずここをきちんと押さえることで理解できる。

2つ目の強みは、原理や歴史から詳しく解説されていることである。特に「第2章　暗号化」では、なかなか理解しにくい共通鍵や公開鍵のしくみについて、そもそもの考え方からみっちりと解説する。この説明により、さらに複雑なデジタル署名等の解説にもすんなりと入って行けるよう配慮されている。

3つ目の強みは、単なるシステムの解説だけではなく、「第5章　インターネットの特殊性と法律・契約」、「第6章　セキュリティ・ポリシー」のように、実運用上で必ず問題となってくる点も含めて、包括的に説明している点である。本書の最大の特徴でもあるのだが、しくみを解説するだけにとどまらず、なぜそれが必要なのか、導入によりどういう問題が発生しうるのかまで、行き届いた解説がわかりやすい言葉でなされている。

?「今までの自社システムの発注は単に『システムの発注』であり、『動けばよい』といったものだったのに対して、インターネットのシステムはある意味で『ビジネスの発注』であり、自社の『リスク管理の発注』となることを意識して行うことが必要です」とあるように、リスク管理を意識するのであれば、当然セキュリティを深く考慮しておく必要がある。システム管理者やシステム構築にかかわる人で、知識に不安のある方は、ぜひ通読されることをおすすめする。（大脇太一）


セキュリティ関連の認定試験にも最適
バランスよくまとめられている。セキュリティ関連の認定試験にも役立つと思う。セキュリティポリシーについての記述がやや少ないが必ずしも不足しているというわけではない。ネットワークエンジニア、更にはシステムエンジニアにとってもよい書籍だと思う。

旧興銀レポートのよう
　暗号技術　電子認証　についての説明は旧興銀出身者らしい、広範囲の調査と、文献の網羅で、現状のレポートとしては役にたちました。この分野は具体的な技術がどうなっているのか、統一的に解説した文献が少ないのは他の評者の指摘とおりです。

　しかし、当該技術の出現と社会的要請（文脈）をすっ飛ばして、現状説明に終始するだけでは、対象への掘り下げと、現象間の関連が見えてこず、読者は単なるインターネットセキュリティ物知りになるだけと思います。それが顕著であるのは、セキュリティ・ポリシィの説明であり、読み終わって結局何が問題なのかが、自分は理解出来ませんでした。

情報セキュリティ関係者の重要参考書
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素人から玄人まで納得の一冊
インターネットの普及にともなういろいろな危険が世の中に増えてきている昨今、「ネット犯罪」「個人情報の漏洩」「電子商取引詐欺」などなど、おだやかでない言葉があちこちで聞かれますが、だからと言って素人の我々には何をどのように守ればよいのかピンとこないですネ。本書はそんな素人にも分かりやすく、起こりうる危険と防御手段をひとつひとつ現実世界の事象に照らし合わせて体系的に説明していまして、大変に分かりやすい内容です。もっとも素人にも分かりやすいからと言って、一般論をさっとひと撫でしたような、手を抜いた説明ではありません。ハードウェア・通信技術から法律に至るまで、とことん調査と追求がなされていて、玄人をも十分うならせる充実した内容となっています。

Eビジネスとハヤリに踊らされて、大きな損害をこうむったり信用失墜しない為にも、必読の一冊だと思います！

初心者にもわかるインターネットセキュリティ本の決定版
インターネット上におけるセキュリティ技術をこれだけ
網羅的で体系的且つ、平易に纏め上げた本は、恐らく初
めての快挙ではないだろうか。

特筆すべきことと言えばIdentrusである。海外の翻訳本
を含めても、Identrusについてこれだけ詳しく説明され
た市販本は初めだと思う。この点については、セキュリ
ティビジネスを専門とされている技術者の方々にとって

も参考資料として利用できるものと思われる。

全体的内容から本書の対象読者は、一般のビジネスマン
やSIベンダーの営業職の方々であり、彼等がインターネ
ットセキュリティ技術を歴史・背景を含めて習得し、仕
事上でＳＥ等の技術者とスムーズに会話が出来ることを
目指したものと考える。

いずれにしても、膨大な参考資料から今の内容に纏め

上げた著者に最大の賛辞を送るとともに、ベストセラー
となることを祈りたい。